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トーンカーブ使用過多による画像劣化


<デジタル波形の一般論>

トーンカーブも厳密には波形データであるので、デジタル波形の一般論をまず述べます。

1)信号処理 信号とは、音声などのような1個の変数、あるいは画像などのような複数の変数の関数であり、ある現象の性質や振る舞いに関する情報を含む物理量であり、そしてこれらの信号から目的とする所望の情報を取り出すための操作が信号処理です。

また信号にはアナログ信号とディジタル信号があり、アナログ信号は連続的に変化するものであり、ディジタル信号はアナログ信号を標本化するなどして、適当な数値データに置き換えたものであります。ディジタル信号において、入手したデータから所望の情報を抽出する処理をディジタルフィルターと呼び、例えばエコーキャンセラーとノイズキャンセラーなどが挙げられます。

2)ディジタル無線通信 変調とは情報を伝送媒体に適した信号携帯に変換することであり、AMやFMなどがそれにあたり、これからのメディア伝達はアナログ変調からディジタル変調に置き換わりつつあります。変調方式には、振幅変調、位相変調、周波数変調などがあるが、3つ一緒に用いることはまずありません。

情報をいくつかの低レートのキャリアに分けて伝送するマルチキャリア通信方式などがあり、特に各キャリアが周波数上で直交するように選んだものを、直交周波数多重分割(OFDM)方式と呼び、ディジタルTVなどがこれにあたり、品質劣化を防ぐことができます。

3)ブラインド音源分離 ブラインド音源分離とは、複数の信号が混合されて観測された場合に音源の独立性を仮定した上で、観測信号のみから音源信号を再現する技術であり、カクテルパーティー効果を信号処理で行うようなものです。



<画像データにおける、トーンカーブ使用過多による劣化>

画像データに用いるトーンカーブを信号処理に見立てて述べさせていただきます。

画像処理技術やCG技術の分野では、アナログ原稿をスキャニングもしくはカメラ撮影してディジタル化、もしくはCGソフトなどを用いて最初からデジタルデータを作成しています。

一般的な画像処理は、アナログ原稿をスキャニングなどを行いディジタル画像にした後、色調変更、色調補正を行うので、何らかの形でトーンカーブを掛けることになります。そのトーンカーブは直線あるいは曲線ですが、実際には256階調のディジタル階調であるため、厳密には波形です。


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そのためトーンカーブを掛ければ掛けるほど、波と波が干渉することになり、トーンカーブを掛けた分だけ、画質の劣化が発生してしまいます。主な劣化要素は階調のばらつきであり、例えば滑らかなグラデーションであっても、トーンカーブを掛け続けると、段々になり、連続階調ではなくなってしまいます。

トーンカーブの使いすぎによる劣化は、極端なケースでは製品などになる前に未然に防げますが程度の軽いものは、製品になってしまっています。この現象は画像処理技術者において、認識のある者とそうでない者がおり、認識のあるものは意識的にトーンカーブの使用数を減らすが、認識のない者は画質が悪くなるほど使ってしまう傾向にあります。

必要なトーンカーブの使用数などは、デザインや原稿によりまちまちなので、限界使用数を決めてマニュアル化、標準化するのには無理があるので、根本的に劣化の起きない 全く新しいトーンカーブが欲しいところです。

そこでベクターカーブで作成するトーンカーブを提案する必要があるのではないかと考えられます。例えばベジェ曲線を用いてトーンカーブの作成を行えば、ユーザーはカーブ の作成を容易に行え、かつ多数カーブを掛け合わせても、画像の劣化が起こらないのではないでしょうか。

ただ問題は、トーンカーブを数式化しても、画像の方が256階調で量子化されているため、カーブがベクターだけでは完全に滑らかにはならないでしょう。


考えられる対策は下の2点であります

1)画像の階調を上げる

2)カーブを画像に掛ける前に、おのおののカーブを合成し、合成した1つのカーブのみ画像に掛け合わせる

“1)”は非現実的である。“2)”は実現可能であると思えます。

“2)”の場合は、おのおののカーブ単体で画像がどう変化するのか確認する必要があるので、画像におのおののカーブをフィルターで確認するようなプレビュー機能が欲しいところです。


現時点の画像処理で言えることは、上手い画像処理技術者ほどトーンカーブを使う回数が少ない(画像の劣化を抑える)ということです。




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